ー私はスターですよ。大部屋なんぞに気軽に声はかけません。
ー恐れ入りました。
そう言ったキョムさんの顔が晴れやかだった。
二代目・モモケンも大部屋のキョムさんに負けてたまるかという気持ちでこの20年励んできたことがわかったからなのかな。
初代が二代目には「伴虚無蔵はいい役者だから抜擢した」と言い、キョムさんには何も言わなかったのは、それぞれにさらにいい役者になるべく奮起して励んでほしい、という初代・モモケンの想いなのだろう。初代・モモケンからの役者のバトンはちゃんと二人に繋がっているのだ。キョムさんもあてつけではなく、いい役者だから抜擢したことを知っていたら、ここまで稽古に励んだだろうか?
モモケン役が歌舞伎役者の家に生まれ、常に先代を越えていくことを求められる尾上菊之助さんだからこその説得力の凄さ。「私はスターですよ」のセリフがこんなに違和感なく似合う人がこの世にいるのか…とため息が出る。
この一件で、二代目もキョムさんも前に進めそうだけれど、それにしても20年は長いね、長いよ〜。他にも20年の時を経て明らかになる展開がこれからありそうな気配?