ーなんじゃあ、急に風鈴を渡してきて。この人はどねえつもりなんじゃろうか。まぁ、でも夏らしくてかわいらしいな〜この風鈴。
るいは風鈴を愛おしそうに見つめながらジョーとナイト&ディまでの道を二人で歩く。
ークリーニング屋のおじさんとおばさん、エエ人やな。
ーはい。とてもよくしてもらってます。
ーサッチモはサニーサイド以外もええ曲たくさんあるんよ。
急にジョーが振り返って言う。
ーそうですか。
大月さんがなんやら色々な英語の曲の名前を言うたけど、ひとつもわからん。でも、楽しそうに話すなぁ、サッチモの話しよる時は。見てるだけでなんだかこっちまでうれしくなる。
ーそないええ曲がたくさんあるんですね、サッチモは。
ーそうだ!今度この前のレコード屋に一緒に行かへん?ほらまだお給金使ってないし。
あ〜ぁ、そんな子どもみたいな顔で言われたら断れんじゃろうが。
そうこうしているうちにあっという間にナイト&ディに着いてしまった。
ーサッチモちゃん、今日はありがとう。
ーいいえ、こちらこそ。風鈴も。
ーじゃ、また。
自分の部屋に帰ってきたるい。お給金でレコードを買うことにした。
ーあれ、なんで私はレコードを買うことにしたんじゃったじゃろうか。
そう言って風鈴を見上げるるいの顔は晴れやかだった。