常連客を大事にするために採算度外視の経営を続ける隠れ家・インサイトの店主、香山。
その度外視経営を支えたのは妻だった。
『誰かを助けるために、誰かがずぶ濡れになってもいいのか』
石子がインサイトで変な顔をしていたのは、依頼者のためなら相談料が払えなくてもすぐ引き受けてしまう潮事務所、すなわち自身の父と母の姿と被っていたからで。
しかし、度外視経営の犠牲になったとばかり思っていた香山の妻は、実は隠れ家経営を提案した本人で、それは香山の働きすぎる性格を心配してのことだった。
外でも働いて店の経営を支えた香山の妻は、体は疲れていても、心はずっと幸せだったということだろうか。
『お父さんはそのままでいてください』
離婚した母も同じように思っていたんじゃないか、決して苦労だけではなかったんじゃないか。そう石子も感じたのだろう。石子もまだ知らない綿郎さんと母のストーリーがありそうだ。
本話は香山夫妻と石子の父母の関係がリンクしていて、石子の『お父さんはそのままでいてください』の涙とともにグッときた。
そして、絶妙な羽男の距離感がよい。焼きそばを持っていくシーンもずっと気には掛けていてさりげなく話は聞くけど、深入りはしない。
演出もまた石子と綿郎さん親子の表情や動きをメインにして、羽男の表情は追わない。最後のプチ和解のシーンだって、直前で事務所を出てまだ玄関先にいるだろう羽男の「和解できてよかったよ」フッ☺️みたいなのを見せるのもアリなのにそれはしない。
あくまでこれは日常の一コマであり、日常は続いてゆく…そこをこのドラマは大事にしているような気がする。そこがまた推せるポイントなんだな!
本話のベストアクトはそば屋の塩崎さんを演じるおいでやす小田さんだ。「絶句」の演技、好きだなぁ。朝ドラ『カムカムエブリバディ』の酒屋のおっちゃんもとてもよかったし、近所のお節介おじさん演じさせたらピカイチだなぁ。俳優としてこれからどんどんお声がかかりそうですね。